いーじまのウチナーヤマトグチ


ディープなコーナーへようこそ。皆さんはウチナーヤマトグチ(沖縄大和口)をご存知でしょうか。 最近はNHKのドラマ「ちゅらさん」などでその存在が人口に膾炙するようになってきました。 標準語のようで標準語と違う意味を持つ沖縄特有の言い回しです。 島口(ウチナーグチ)を十分に使いこなせない若年層がよく使います。 有名なところでは「だからよー」「〜しましょうね」などがあります。 (「だからよー」は標準語で言うと「そうなのよ」と言いたい場面で登場し、 「〜しましょうね」は誘う場面ではなく、自分の意思を婉曲的に伝えるのに使われます。) ウチナーグチの現代日本語への直訳から生じたものが多いようです。(ウチナーグチ自体、古典日本語の一種のようです)。 ここ伊江島で私が驚いたウチナーヤマトグチをいくつかご紹介しましょう。

カゲル:学校などを「休む」こと。元のシマグチは「カギユン」。
例文「学校カゲルなよー。」

アラハジメ:ハナハジメではない。最初、初っ端(しょっぱな)の意。漢字を当てれば「新始め」。元のシマグチは「アラパジミ」。
例文「アラハジメからやれよ。」

イーシャアルイーシャナイの反意語。「面白い。」「楽しい。」の意。イーは「良い」のようです。子供が使うのを聞いて意味を教えてもらいました。

ドンナニ〜(ダ)カラ!:感嘆文です。日本語で「どんなに(or何と)〜(こと)か!」と使うのと同意です。がなぜか、「ラ」が語尾についてきます。これは隣り町の本部町では使わないようです。実際、本部の人が本部のスーパーでイージマンチュに会ってこう聞いたそうです。「何で?わざわざこっちで買わなくても島で買い物したらいいでしょ?」シマンチュ:「島はドンナニ高いカラ!」。「島はとっても高いんだよ!」とでも訳しましょうか。

マギイ:「大きい」の意。最近島ないちゃーのYさんがシマンチュのおばぁに「マギイ鍋だよ」と話しておられたのを目撃。シマンチュの友人に意味を確認すると「大きい」という意味だとのこと。やるなぁYさん。使いこなしておられました。脱帽。ウチナーヤマトグチと言うよりしまぐちかな…。 じゃ、マギーブイヨンはでかいブイヨンか?業務用マギーブイヨンだと マギーマギーブイヨン…何か「ちゃうちゃう、チャウチャウちゃうでー。」みたいやな。

オウチ:「お家」=家のこと。大人から子供まで皆さん家の事を「お家」と言われます。沖縄本島でもそのように言うようです。アクセントは「オ」にあります。大人が言うと何となく可愛い感じがします。

ピンサレル:「ピン」=「村八分」+「される」。中々恐ろしい言葉です。島のような小さな地域社会では、それは死刑宣告に等しい響きがあります。 恐らくは島民が最も恐れていることではないでしょうか。しかし私たちはピンされても何とも思わないんですな、これが。島ないちゃーだからかな…。

コウシャカース:「公社化す」ではない。コウシャ=ゲンコツ、カース =食わすor食らわす。「ゲンコツを食らわす」なんですな。島の郵便局は公社化してコーシャカーされているそうです。(伊江局は北部でも指折りの金融取り扱いが多い局なのだ)。アホなことばっかり言ってたらコウシャカーされそう。

シニ,シィニ(真に)」:「本当に」「マジで」の意。恐らく「真に」から来ていると類推される。
「今日の練習、シニきつかった。」

アメ(アメー、アーメ)」:しまんちゅからご指摘をいただきました。ほとんどしまぐちです。沖縄本島では「アイ(アイー)」に相当。感嘆詞です。標準語に訳すとすれば アメ=「あら」「あれ?」,「アメー」=「あらー」,「アーメ」=「あら、まあ」「おー」「おいおい」といったところでしょう。アーメの方が驚きが大きいです。類縁の言葉に「アギジャ」がありますが、これは本島で使う「アギジャビヨー」の省略形でしょう。
最近大阪からきた友人が近所のオバアを訪問したのですが、こんな会話がなされました。 大阪の友人:「こんにちは」。(突然の訪問に驚いた)オバア:「アメ!」。大阪の友人:「今日は雨がやんでよかったですね。」…おいおい…。
久しぶりに会った子供が大きくなっていた場合…「アーメ、大きくなってー。」

オープン」:「栓抜き」のこと。はっきりいって英語です。opener(オープナ、あるいはオープヌと聞こえる)が訛化したようです。沖縄本島でもこう言います。アメリカ支配の名残。うちの妻(ナイチャー)がオジーに「オープン持ってきて」と言われ、思わず何度も聞き直したそうです。

語尾の「ヨー」:沖縄本島南部ではよく語尾に「サー」がつきますが(「ちゅらさん」でおなじみかもしれません。)、伊江島では「ヨー」がつきます。これは関西弁(尼崎弁?)の「ヤー」に対応していると考えられます。子供が連発します。
例文「あのヨー、今日はヨー、雨がふって寒くなってヨー…」

フン(鼻息):鼻息です。意味は無い。この「フン」という鼻息を子供がよく出します。特に上記のヨーと併用され、小さい子供であるほど間を持たせるために連発します。英語で言うなら“You know?"???
例文「あのヨー、フン、今日はヨー、フン、雨が降って…。」

イミヨー(意味よー):「意味は何だ」と聞きたい時に使います。相手がわけのわからんことを言っている時、反感を込めて使ったりします。関西弁の「何ゆーとんねん」に相当。アクセントはミにあります。発音してみましょう。沖縄本島でも小中学生がよく使います。始めて聞くとまず意味がわかりません。こんな会話がありえるかも。 シマンチュ:「意味よー」ナイチャー:「は?何言ってんの?」シマンチュ;「だから意味よー」シロヤギさんとクロヤギさんだなこりゃ。

〜ダワケ,ワケ:「〜だよ」と言う場合や、「〜だからだ」と理由を示すのに使います。かなり融通が利きます。これも沖縄本島でも使います。「ちゅらさん」でも「何でなの?」と言いたい時、「何でだわけ?」と言っていました。
例文「今日ははよー、学校だわけ、それで遊びに行けないわけ。行けないのはだからだわけ。」

〜ダハズ、〜ハズ:語根は島口の「パズィデャー」。これも本島でも使いますが、外すわけにはいきません。普通、標準語では「〜に違いない」という意味で「〜のはずだ」と言いますが、「ダハズ」はそこまで確信がこもっていません。あくまで「かもしれない」「じゃないかな」程度の意味で使います。 英語で言うなら“must”ではなく、“may”あるいは“I think”です。 これを知ってないとコミュニケーションギャップが生じます。実際こんな場面を目撃しました。
島ンチュA:「トンボが飛んでるから台風が来るはずね。」それを聞いた観光客:「えっ、台風来るんですか?飛行機どうしよう。」島ンチュA:「えっ、あっ、そのっ…(絶句)」
くれぐれもご注意ください。

イーシャナイ:「面白くない」「楽しくない」の意。 何かしてて、楽しくないとこうつぶやきます。 語根は「いい+じゃない」に相当する島口?「いい」「ではない」から楽しくない?なわけないか…。

インチキ:不公平な扱いを受けた時、子供が絶叫します。「そんなの不公平だー。」の意。誰もインチキはしていません。

スーデ:「ちょっと」「少し」の意。
例文「今日疲れてる?。」「スーデ。」

今ガ〜する(した)。:「今」を強調するために、この言い回しがあります。「まさに今、ようやく今」ぐらいの意。ですから「今が」は主語ではありません。
例文「今がご飯食べたんだよー。」(=「ようやく今、ご飯を食べたんだよ。」)

ナニハ(naniwa)?:「何が?」と聞く時使います。格助詞「が」の代わりに「は」を使うわけです。「ニ」にアクセントがあり、初めて聞くと何のことか分かりません。 思わず「 ― 恋時雨」「 ― 任侠伝」「 ― 金融伝」などと突っ込みを入れたくなります。

イチバン:れっきとした日本語ですが、文字通り一番ではない時にでも使います。 沖縄本島でもその傾向はあるようです。誇張法なので「非常に」位の意味で引き算して考えるとよいです。例えばある人が「これがイチバン上等。」と使ったとします。 別の時にその同じ人が別のものを指して「これがイチバン上等。」とまた言うかもしれません。文字通りの一番ではないわけです。

ナニモカモ:これは上記イチバンに似た使い方をします。基本的に標準語と同じ意味ですが、ほめる時に多用し、かなり誇張した表現です。引き算して「色々」位の意味でとらえるとよいです。「あの人はナニモカモできるよー。」と言った場合、本当に何でもできるのではなく、「色々できる。」「あそこにはナニモカモそろっていた。」は「色々そろっていた。」というわけです。ちなみにアクセントは「カ」にあります。

ブダイ:魚のことではなく。「舞台」つまりステージのこと。

トウ:掛け声。沖縄本島でも使います。元シマナイチャーHさんの証言:「○×農機で働いていたのですが,そこで整備の仕事をする時,たとえば部品の位置合わせを二人でしている時等,『はい,そこでとめて!』みたいなニュアンスで使われていました。お酒を注ぐ時も,『とー,とー,とっ,とおっ!』とかやってましたね。」

ドゥーシ:友達のこと。漢字を当てるとしたら「同士」。沖縄本島では普通ドゥシグヮー(同士小)と言います。ドゥにアクセント。

チョーバ:「自慢」のこと。「チョーバする」は「自慢する」アクセントは「ー」の部分にあり。語源は跳馬?どの漢字があたるのか辞書を引いても不明。どなたか教えてください。子供から大人までかなりよく使う言葉。

ジョウズ(上手):サメではない。「好き」の意。勿論、本当に上手な時にも使いますが、「好き」程度でも使います。それで本来の意味でとらえると変な文章に聞こえることがあります。例えば「あの人は食べるのがジョウズだからヨー。」と使ったりします。食べるのが好きだわけ。

ガッコウ(学校):学校です。しかしただの学校ではない。島では保育園や幼稚園も含めて学校と言います。とても若いお姉さんが「子供を学校に連れて行く。」といった場合、幼稚園か保育園の可能性が高いです。

アクセントは後ろから二番目の原則:最近気付いたのですが、名詞の場合、後ろから二番目の音にアクセントがあるようです。例えば「エレナ」さんの場合、「エナ」。「アレダチ」(「あの人たち」の意)なら「アレチ」。つまり3文字なら_ ̄_4文字なら_ _  ̄_って感じです。間違っていたらすみません。

これくらいマスターしておきますと、かなりイージマンチュっぽく聞こえるはず(???)。他にもイージマ特有のウチナーヤマトグチに気付いた方、間違いに気付いた方、いらっしゃったら、どうぞメールでご一報下さい。